西大畑・旭町とは…湊町新潟市の海岸沿い、近代に開発された砂丘地周辺。お屋敷、別荘、レトロな洋館、学校、さまざまな文化施設が点在する坂の町です。

西大畑、旭町について

【終了】木下晋 絵本原画展「熊猫的故事」+「はじめての旅」

木下晋展ちらし

 

会期:2016年11月16日(水)~12月18日(日)
開館時間:9時~21時
休館日:月曜日、11/24振替休
会場:砂丘館 ギャラリー(蔵)+一階全室<※一階和室会場は市民利用等で見学できない場合があります>
観覧無料
主催:砂丘館

 

凝視の鉛筆画家・木下晋が一冊の絵本に描き出した中国四川省の野生のパンダは、日本人に刷り込まれたパンダの通俗的イメージをくつがえす。

昨年春、中国の二十一世紀出版社より刊行され大きな反響を呼んだ絵本『熊猫的故事』(文・唐亚明)と自らの少年時代を描いた絵本『はじめての旅』(福音館書店 二〇一三年)の原画ほかを展示。

 

<会期中の催し>

◆ギャラリートーク 木下晋× 亚明(『熊猫的故事』執筆者)

 11月26日(土)14時~15時30分

 聞き手:大倉 宏(砂丘館館長)、参加料 500円(予約不要、直接会場へ)

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

パンダって…あの白黒の姿は、人間から見ると「かわいい」となるけれども、他の動物には恐怖の対象なんです。先日、生命学者の中村桂子さんと対談したら、今、人間は地球の許容量の倍の人口があるそうなんですね。だからいろんな問題が起きている。だから、パンダを絶滅危惧種というけれども、本当は人間が絶滅危惧種なんだと。人間なんていつ滅んでもいいような生きものだけど、パンダをかわいいと思うのは、大自然がパンダを通して人間にまだ滅ぶなと言っているんではないかと、そんなことを考えているんですね。

木下晋・2013年12月丸木美術館での水沢勉との対談の発言(ブログ丸木美術館学芸員日誌より転載)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

はじめての旅

「はじめての旅」2013年 福音館書店

 

 

 

熊猫的故事

「熊猫的故事」2015年 中国・二十一世紀出版社(※来春、講談社より出版予定)

凝視家が描くの世界  

木下晋は凝視の画家だ

瞽女(ごぜ)小林ハル、ハンセン氏病を負って生きた詩人桜井哲夫を描いた鉛筆画は「見ることのできない人間」をここまで見つめるのかという驚きを与えるとともに、この過剰な凝視が、そのような人々と向き合う彼の誠実な姿勢なのだと感じさせる。

その木下さんから「パンダの絵本」を制作中と聞いたときは、「えっ」と声が出た。日中国交回復時に日本に送られたパンダが日本中に巻き起こした熱狂が記憶にある。あれ以降すっかり親しまれたこの動物は、今では「かわいい」癒し系生き物の代表となった。なぜ、パンダを、木下さんが…?

依頼が中国から舞い込んだときは、さしもの木下さんも当惑したという。しかし招聘されて行った四川省で、野生のパンダを見て、イメージは変わった。あの白黒でたれ目の姿は、パンダが厳しい自然界を生き延びるためにまとった威嚇の姿だったのだ。そして生まれた絵本『熊猫的故事』は野生動物としてのパンダを描く珍しい一冊になった。と言っても科学絵本ではない。絵本的ストーリーも作られている。しかしここでも画家の凝視は生きている。

凝視とは必要以上に見つめることで、目に張り付いた既存のイメージを破ることだ。パンダを語りだすと、熱くなってとまらない木下さんを見つめていると、世界は本当に未知で満ちているのだと感じる。それを見まいとして、私たちは手垢のついたイメージで目をおおっているだけなのだ。

その木下さんが幼い頃、既知の場の外に母親の手で連れ出された体験を描いた絵本が『はじめての旅』。2冊の絵本原画と4メートルを越える鉛筆画の大作を展示する。砂丘館では2006年に開催した『ハルばあちゃんの手』原画展以来、10年ぶりの木下晋展になる。

大倉 宏(砂丘館館長)

 

☞チラシのダウンロード、詳細は当館HPもご覧下さい