【終了しました】闇の明るさ 渡邊博展
「やさしい斑紋」1988年 油彩、キャンバス 60.6×41.0cm
2018年
2月23日(金)~3月21日(水・春分の日)
休館日 月曜日
観覧無料
主催:砂丘館
新潟市に生まれ、独特の抽象絵画を描き続ける画家・渡邊博の初期作から近作までを紹介。
油彩、水彩約30点を展示。
絶望のやさしさと闇の明るさについて
砂丘館と新潟絵屋での回顧的展示のためにお借りしてきた絵を、冬の和室で広げた。久しぶりの大雪で砂丘館の庭は白い。
初期の作品「息子を抱く自画像」に、とても打たれる。そして、冬の夕暮れの窓のような青い風景。鏡や人形や経文などが浮遊する80~90年代の作風を経て、渡邊の絵は抽象に変化していくが、次々と絵を広げながら、あのとき感じた「闇」の感覚を、 変わらず自分が受け取ってきたことに気付く。
「息子を抱く自画像」は雄々しい。でも裸身のふたりは痩せていて、子は父にしが みつき、「何か」に立ち向かう顔で振り向く父の手は、保護するようにその子を抑えているが、目には無力を自覚するような諦念の影がただよう。襲いかかっているのが猛烈な寒気であり、嵐であり、猛獣であるなら、とても助かりそうにない。そのような絶望的ありようの暗さが、けれどこの絵に、どこか無限にやさしさを与えている。渡邊博の絵はそんなふうに人間の心をあたため、明るませてくる。変わらない。
大倉 宏(砂丘館館長)
◆上記は、「渡邊博展」チラシに掲載した文章からの抜粋です。
ギャラリーツアー
3月4日(日)午後3時~4時
参加無料 申込み不要
渡邊 博(わたなべ ひろし) 1938年新潟市生まれ。熊谷喜代治にデッサンを学び、後笹岡了一に師事。日展、光風会に出品し、66年光風会会員となるが、68年退会。以後は紀伊国屋画廊、美術ジャーナル画廊、現代画廊、ギャラリーXepia、ギャラリー汲美、(株)東京現像所、K’sギャラリー、セッションハウス(いずれも東京)、ギャラリーDEN(ドイツ・ベルリン)などで個展により発表。新潟での個展は91年新潟伊勢丹、2002・05・08・12年新潟絵屋。そのほか新潟絵屋で2013年久松温子との二人展開催。千葉県南房総市在住。
「息子を抱く自画像」1975年 木炭、紙 64.0×49.0cm