【終了しました】10月30日(土)~12月19日(日)「天国の事は忘れてしまえ。この地獄の土の上に、厳かに立て。」倉持至宏展
倉持の作品は脱物質的だ。以前は、画面が装飾的な模様で埋め尽くされた作品を制作していた。制作意図を聞いた時、頭の中に図像がはっきり見えるので、自分はただ描き写すだけだ、という。
作家が作品を制作する際、イメージが事前に明確に視覚化されることは実は希なことである。イメージスケッチやエスキースを重ねていく中で、イメージを明確化していくことが一般的である。通常作品は、作品化する以前に、頭の外へと未確定のまま出力されるのである。いちど空気にふれるのである。しかし、彼の作品は一度も空気にはふれずに出力される。出力されても空気には触れないかのようだ。
最近の作品も、マチエールがある画面を持ちつつも、見えてくるものはその表層のディテールのみである。描かれる人体も、空間的表現であるにも関わらず実体感が乏しく、白昼夢のように画面の表面を漂い、あくまでも二次元の境界にとどまる。鑑者と作品空間を共有させない、隔絶された心地よさが、彼の作品の魅力だと思う。 長岡造形大学准教授 岡谷敦魚